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2014/04/18   
セキュリティ全般   

一台200万円のスマートフォンって?

昨年、米国にある世界最大の航空機メーカー、ボーイング社は、軍事利用に特化したスマートフォン「Boeing Black」を開発していることを認めました。同社は軍用航空機、防衛システム、ミサイルなど安全保障分野の製品やサービスを幅広く手がけています。

このスマートフォンは、グーグル社が開発したAndroid OSをベースにしています。一般的なスマートフォンと比べてもっとも特徴的なのは、超高度なセキュリティ機能でしょう。筐体をこじ開けようとすると、データやアプリケーションを消去して、スパイ映画のように自己破壊する仕組みになっています。ディスクの暗号化、盗聴防止機能、生体認証のセンサーも搭載しています。その他、ソーラー充電や衛星通信など、軍事利用に役立つ機能・装備も用意されています。そして、同スマートフォンは米国内で組み立てられます。

こうしたスマートフォンの需要が生まれる背景として、国家が安全保障の一環として、さまざまなサイバー攻撃やサイバー諜報活動を行っていることが挙げられます。

実際、エドワード・スノーデン氏により、米NSA(National Security Agency、国家安全保障局)が独メルケル首相や、仏オランド大統領など各国の指導者35名の通話を盗聴していることが暴露されています。

日本でも、衆参両院や、中央官公庁へのサイバー攻撃が、日々観測されています。パスワードの流出や、メールの盗聴が確認された事案もあります。

対諜報用スマートフォンBoeing Blackは、アメリカの国防関連の機関や企業などに限定して販売されることになるため、技術情報・営業情報などは基本的に秘匿する方針で貫かれています。販売時期や販売価格についてもボーイング社は正式発表していませんが、米国メディアなどでは、今年夏ごろに1台2万ドル(約200万円)で発売されるとの情報が流れています。

また、軍用ではありませんが、企業や個人向けにセキュリティやプライバシーを強化したスマートフォン「Blackphone」が、2月にスペインで開催されたMobile World Congressにて正式発表されました。Blackphoneには通話、SMS、アドレス帳を暗号化するアプリケーションが搭載されており、2年分のアプリサブスクリプション費用なども含め、629ドルで購入できます。

一般にセキュリティを維持するのには、コストがかかります。しかし、扱う情報の重要性や用途などに応じて、必要なレベルのセキュリティを確保することは不可欠なのです。
<記事提供元:株式会社イード>