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2014/07/08   
サイバー攻撃    セキュリティ全般   

8年におよぶスパイ活動、米司法省が中国人民解放軍5名を起訴

米国司法省は2014年5月19日、米国企業に対してハッキング活動を行い、機密情報を盗んだとして、中国人民解放軍(PLA)の関係者5人を指名手配しました。彼らのハッキング活動は2006年から開始され、現在に至るまで8年間も続けられてきたと同省は主張しています。

FBI — Five Chinese Military Hackers Charged with Cyber Espionage Against U.S.
http://www.fbi.gov/news/news_blog/five-chinese-military-hackers-charged-with-cyber-espionage-against-u.s

米国は過去数年にわたり、中国発のサイバー産業スパイに対する公な非難を繰り返してきました。しかし、こういった政府支援型のハッキング活動に対して米国が訴追を行ったのは、今回が初めてのことでした。

米国司法省によると、先の5人によって攻撃された米国企業は、東芝傘下の多国籍原子力関連企業「ウェスチングハウス」、太陽光発電の「ソーラーワールド」の米国子会社、米国最大の製鉄企業「米国USスチール」、特殊金属製造大手の「アレゲニー・テクノロジーズ」、そしてアルミニウム製品の世界的メーカー「アルコア」の計5社。さらに全米鉄鋼労働組合(USW)も標的とされたということです。

2010年にウェスチングハウスがハッキング攻撃を受けた際、同社は中国に原子力発電所を建設するための調整を行っている最中でした。起訴状によると、この攻撃によって、同社の内部メール、そしてプラントのパーツなどに関する独自のデータなどが盗み出されました。

また、ソーラーワールドの米子会社が2012年に受けたハッキング攻撃では、キャッシュフローデータや製造測定基準、生産ラインの情報、経費、さらには弁護士との通信までもが盗まれたと主張されています。

これらの犯行を行ったとされる5人は、これまで様々な米国企業に攻撃を行ったと噂されているPLAの悪名高きハッキングチーム「61398部隊」の士官であると言われており、彼らの本拠地は上海の高層ビル街にあるという説が有力視されています。

産業スパイの仕事は、あらゆる資料が紙からデジタルに移行したことで、大いに簡略化されました。たとえばライバル企業に雇われたスパイは、メモリスティックひとつで大量のデータを盗み出すことができるようになりました。

しかしPLAのハッキングチームは、スパイ先の企業に足を踏み入れることすらしません。彼らのオフィスから、文字通り「国家予算レベル」の潤沢な資金を利用して、海外企業にハッキング攻撃を仕掛け、貴重なデータをテラバイトの単位で吸い上げることができるのです。

米国は、その被害の具体的な規模を発表していません。しかし、これらの名だたる企業から、貴重な知財が盗まれたことは、企業にとっても国にとっても非常に大きな損失であることは間違いありません。

そして、このようなスパイ活動を行っている国は、どうやら中国だけではないようです。たとえば今年3月には、「米国のNSAが中国のHuawei社をハッキングしていた」という資料がエドワード・スノーデンによって暴露されています。企業が保有する知的財産は、いまやライバル社のみにとっての宝ではなく、サイバースパイ合戦の標的にもなっているのです。
<記事提供元:株式会社イード>