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2014/12/12   
セキュリティ全般   

サイバーセキュリティ基本法が成立

2014年6月11日に国会へ提出された「サイバーセキュリティ基本法案」が、2014年11月6日の衆議院本会議で可決成立しました。この基本法は、国のサイバーセキュリティに関する施策に関する基本理念や責務を明らかとし、施策の基本となる事項や体制を定めることを目的としたものです。

内容的には「サイバーセキュリティ戦略の基本的な計画を決めること」「それに必要とされる様々な施策を講じること」「サイバーセキュリティに関する施策を推進するための司令塔として、内閣にサイバーセキュリティ戦略本部を置くこと」などが盛り込まれています。

サイバーセキュリティ基本法案(衆議院公式ウェブサイト)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g18601035.htm

この基本法が記している「基本的施策」は、非常に広い範囲の内容(たとえば国の安全に深刻な影響を与えるインシデントへの対応、事業者や教育機関の自発的な活動の推進、研究開発の推進、人材の確保、犯罪の取り締まり、産業の振興、国際競争力の強化、国際協力の推進など)をカバーしています。

現時点では、この基本法が私たちの生活にどのような影響を与えるのか、具体的な内容までは記されていません。しかし第十五条には、民間事業者や教育研究機関のため、また国民一人一人のため、国がサイバーセキュリティ情報の提供と助言を行い、「その他の必要な施策を講ずる」と記されています。

また、この基本法は国の取り組みだけに言及するものではありません。第五条から第八条は、地方自治体や重要インフラ、事業者、教育機関に対し「自主的かつ積極的にサイバーセキュリティの確保に努め、サイバーセキュリティの施策に協力するよう努めること」を義務づけ、さらに第九条は国民について「関心と理解を深め、サイバーセキュリティの確保に必要な注意を払うよう努めるものとする」と記しています。

今年は世界的に見て、大規模なセキュリティ侵害が次々と起きた年でした。国内ではベネッセの事件が、海外ではTargetやHome Depotの事件が、それぞれ「史上最大規模の深刻なインシデント」として取り沙汰されたことで、人々のセキュリティへの関心が高まる中、この基本法案は成立しました。

これまで漠然としていた「日本のサイバーセキュリティ」の重要性や基本方針を明確化し、対策本部を設置し、一般企業や国民にも責務を担わせる基本法案が成立したことで、政府のサイバーセキュリティ計画の土台は固まった段階だと言えるでしょう。私たちの業務や生活に具体的な変化がもたらされ、各企業のセキュリティ担当者の方々が忙しくなるのは、これからということになりそうです。
<記事提供元:株式会社イード>