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2014/10/14    ネットリスク    スマホ・タブレット   

「基本無料ゲーム」が高額課金に繋がる理由とは

今を遡ること約2年半、2012年5月に大きく話題になった「コンプガチャ(※1)騒動」という出来事を、皆様は覚えていらっしゃいますでしょうか。

子どもたちが携帯向けのゲームで、有料サービスを過度に利用してしまい、保護者に高額な利用料の請求が来る事態が頻発したことから、当時深刻な社会問題として取り上げられました。(※2)

ゲーム提供会社側の対策や利用者側への啓発が進んだこともあり、昨今は社会問題として連日取り上げられるようなことはなくなったものの、 昨年12月に独立行政法人国民生活センターが発表したオンラインゲームに関する相談のうち当事者が未成年である件数は、コンプガチャ騒動当時の2012年と翌2013年を比較するとほぼ横ばいで低年齢化しているという実態が報告され(※3)、未だ根強い問題として残っています。

本記事では、そういった「高額課金に結びつきがちなゲームの仕組み」について取り上げます。

「基本無料ゲーム」とは

従来からあったゲームソフトは、ソフト本体を一度購入すれば最後まで遊ぶことができた一方、利用者は遊ぶまで内容がわからないゲームに、最初にまとまったお金を払わなければならないという問題を抱えていました。

それに対し「基本無料ゲーム」と呼ばれるゲームは、昨今のテレビCMで「基本利用料無料!」などの単語を目にする機会もあるように、ゲームをはじめるためにソフト本体を購入する必要がなく、無料で遊びはじめられるゲームという形をとっています。

そのため、利用者であるお子さまは初期投資を気にすることなく「面白そうだし、タダならちょっと試しにやってみよう」と気軽に手を出せます。
この「はじめやすさ」が、お子さまたちが「基本無料ゲーム」に接する機会の増加の一因であり、ひいては未成年者の高額課金の相談件数に繋がっているとも言えます。

ところで、無料で遊びはじめられるならそのまま無料で遊んでいればよいのではないか?という疑問を持たれる方も多いと思います。
では無料で遊べるとうたわれている「基本無料ゲーム」とは、どうやって売上を出しているのでしょうか。

勿論ゲームによってその形は様々ではありますが、一般に多く採用されている仕組みとしては、より楽しくゲームを遊ぶための追加の機能や、ゲーム中で便利なアイテムを有料で販売するという形をとっており、「アイテム課金」とも呼ばれています。

課金の仕組み

利用者は「タダだから遊ぼう」とゲームをはじめます。
実際にゲームの序盤から中盤にかけては無料でも問題なく楽しめるバランスに調整されていることが多く、しばらくは無料でもストレスなく遊び続けることができます。

しかし進めていくに従って、段々と無料で遊べる範囲では遊び続けていくのが困難なバランスになっていきます。
例えば、とても強い敵が出てきて、無料で手に入れられるアイテムでは歯が立たない、などのケースです。

利用者は「せっかくここまで時間をかけてきたし、先に進みたい。なんとかこの敵を倒したいな」と思わされます。そこでそれを解決するための手段として、有料アイテムを買うという方法が存在するのです。

有料のアイテムを買うことで、一度はゲーム進行の妨げとなっていた敵を倒すことができました。
しかし進めていくと、今度はもっと強い敵が現れます。
そしてそれを倒すべく、また新たな有料のアイテムを買います。
こうして段々と有料アイテムを買うことに慣れさせ、課金への抵抗が無くなっていく、という仕組みです。

「基本無料ゲーム」が高額課金に繋がる流れ

前述の「強い敵を倒すため」という理由の他にも、

  • ● アイテムのコレクション性が高い仕組みになっていて、
      無料のくじ引きでは欲しいアイテムの当たる確率が0.1%にも満たない
      ⇒ 有料で引けるくじ引きでは、希少なアイテムの当たる確率がとても高くなっている
  • ● 同じゲームを遊んでいる人と通信対戦ができる仕組みだが、
      相手のほうが先にはじめていて自分より強い
      ⇒ 有料アイテムを買うことで、先行していた友達に追いつくことができる

など、様々な課金を求めてくるパターンが存在します。

これらのアイテムは一般に1つ100円〜300円程度と、1度に払う金額としてみればそう大きな額ではなく、「このくらいなら払ってもいいかな」と思えるような価格設定になっています。

「一度に数万円分の課金をした」などはあくまでレアケースであり、はじめのうちの「このくらいなら」の気持ちが段々と課金することに慣れていってしまった結果、少額な課金の積み重ねによって、数万円、数十万円という額に膨れ上がってしまうことがほとんどです。

また、例として挙げた一度の課金金額が少額であること以外にも、様々な"利用者を課金に誘導する仕組み"がこういったゲームには含まれており、海外では経済学者が「基本無料ゲーム」の収益化構造についての論文をブログに投稿するほど(※4)注目されているのです。

こういった高額課金の事件は「コンプガチャ騒動」以降長く問題となっているため、ゲーム提供会社側でも、サービスごとに年齢で利用できる月額利用料上限を設ける(例:未成年は月額1万円まで)などの対策がとられていますが、サービスによっては最初の利用者情報登録時に年齢を偽ることで回避できてしまったりと、対策が万全とは言えない状況にあります。

高額課金の被害にあわないために

保護者がお子さまにスマートフォンでゲームを遊ばせる際には、保護者もゲーム機器やゲームの仕組みについて確認することや、利用料の支払い方法はクレジットカードなのか、WebMoneyなのか、携帯利用料決済なのか、お子さまが遊んでいるゲームの、どこまでが無料でどこからが有料なのか、いくらまでなら使ってよいのかなど、事前に話し合うことが大切です。

また、こういったスマートフォンがもたらす様々な危険性の啓発に向けて、デジタルアーツでは「スマホにひそむ危険 疑似体験アプリ」をご提供しています。

今回の基本無料ゲームの高額請求の実例をはじめとして、お子さまがスマートフォンを使うことでどういった危険に巻き込まれる可能性があるのか、疑似体験を通して知ることができ、またどう対策をすればよいかが学べるようになっています。

お子さまにスマートフォンを持たせる上での対策やご家庭でのルール作りのため、是非参考になされてはいかがでしょうか。

<インターネットデータラボ:田辺>


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