導入事例

ご担当者様の声
教育委員会・大学・デジタルアーツが連携し、ネットいじめ対策
~尼崎市の児童生徒がネットいじめにつながるワードを選定、書き込みをブロックした上で教師に通知し、指導につなげる~
尼崎市立教育総合センター 学校ICT推進課係長(当時) 瀧本晋作氏 ・ 兵庫県立大学 竹内和雄准教授
兵庫県 尼崎市教育委員会
兵庫県 尼崎市教育委員会
尼崎市は兵庫県の南東部に位置する人口約45万人の中核市です。近世まで京都と瀬戸内海を結ぶ交易の中心地として繁栄し、現在では工業地域や商業地域、住宅地も発展を続けています。2016年には市制施行100周年を迎えました。「未来志向の教育」「個の尊厳や人権の尊重」「家庭・地域社会との連携(子どもの視点に立った教育)」を基本方針として掲げています。

「見守りフィルター」でネットいじめにつながる
NGワードをブロックし教師に通知、指導につなげる

スマホのルールづくりを考える「尼崎市スマホサミット2021」
スマホのルールづくりを考える
「尼崎市スマホサミット2021」

兵庫県尼崎市教育委員会(以下、尼崎市)は、児童生徒に1人1台端末を配布するGIGAスクール構想で約3万台のタブレット端末を整備し、Webフィルタリングソフトとして「i-FILTER@Cloud」GIGAスクール版(以下、「i-FILTER@Cloud」)を導入しました。「i-FILTER@Cloud」には任意のワードで検索や書き込みをブロックし通知できる「見守りフィルター」という機能があります。尼崎市は2022年度から「見守りフィルター」を活用してネットいじめにつながるワードをブロックする取り組みを始めようと検討しているところです。

尼崎市の特筆すべき点は、この「見守りフィルター」に登録するワードを教師など大人が設定するのではなく、児童生徒に考えさせて決める点にあります。竹内准教授は「教育委員会の生徒指導担当と情報担当の連携、大学の研究者と企業、今回の場合はデジタルアーツが連携していることは画期的なことです。他では聞いたことがありません」と強調します。

多くの教育委員会や学校では生徒指導担当と情報担当が分かれており、それぞれが単独で動く傾向にあります。尼崎市では2021年度に児童生徒がスマートフォンなどの使用に関するルールづくりを考える「尼崎市スマホサミット2021」を開催し、これをきっかけに教育委員会内の連携が密になりました。瀧本氏は「(生徒指導担当と情報担当が)タッグを組んだことにより、視野も広がりました」といいます。

この連携について竹内准教授は「ネットいじめは生徒指導担当と情報担当が一緒になって取り組まなければ対策が難しい問題です。従来、生徒指導が優先されていましたが、GIGAスクール構想で情報が逆転し、町田市の事件をきっかけにまた生徒指導に逆転してGIGA端末を使わないという自治体が出てきたり…と行ったり来たりしている状況です」と背景を語ります。しかし「児童生徒は端末を使いながら光と影を学んでいかなければなりません。その上で機械による制御も重要です」(竹内准教授)といいます。

「i-FILTER@Cloud」には、任意のワードで検索や書き込みをブロックできる「見守りフィルター」という機能があります。瀧本氏は「児童生徒がリアルな目線で選んだネットいじめにつながるワードを『NGワード』として、『見守りフィルター』の検出ワードに加えての運用を検討しています」といいます。竹内准教授は「NGワードの認識は大人と異なり、児童生徒だからこそ見えるものがあります。自分たちでルールを決められるため、責任感を持つことになりますし、自身も納得感が得られることから、ルールの順守にもつながります」といいます。

NGワードの書き込みが「見守りフィルター」で検出されると、教師はいつ・誰が・どんなNGワードで書き込みをしようとしたのかを確認することができます。竹内准教授は「実際の喧嘩であれば教師は介入することができますが、ネット上ではそれは難しいです。GIGA端末は文房具ですから、個人所有のスマホと違って教師は中身を見ることができます。せっかくツールを持っているのに、学校でチャットは一律禁止などとしていては指導の機会を手放していることにもなります。『見守りフィルター』があることによって教師も指導につなげることができるのです」と述べています。

尼崎市は市内全校に「学校管理者」の権限を与えて、各学校の実情に合わせた形で「i-FILTER@Cloud」を活用していく運用を始めています。これに加え、2022年度からは全市で効果的に「見守りフィルター」を活用していく方法についても検討していきます。

GIGA端末はツールとして効果的に活用する

尼崎市立教育総合センター 学校ICT推進課係長(当時) 瀧本晋作氏
尼崎市立教育総合センター
学校ICT推進課係長(当時)
瀧本晋作氏

尼崎市教育委員会は、教育目標に基礎学力の向上と授業の質的改善の二本柱を掲げています。その二本柱のもと、児童生徒に1人1台端末を配布するGIGAスクール構想が始まりました。あくまでGIGA端末はツールであり、効果的に授業改善として使っていくという考え方です。市内には、小学校41校、中学校18校、特別支援学校1校の計60校があり、2021年、児童生徒にChromebook約3万台を整備しました。あわせてWebフィルタリングとして「i-FILTER@Cloud」を導入しました。

尼崎市の特徴として、GIGAスクール構想前より児童生徒と教職員のPCを一体で更新しようと動いており、2021年9月には児童生徒と教職員のPCが揃った体制を構築できています。また、GIGA端末の活用は情報担当の教師に任せがちになってしまうため、全ての学校で管理職などを含む「ICT活用推進チーム」を設け、年間7回ほど各学校でGIGA端末の活用について情報交換を積極的に進める場も作っています。

元々、児童生徒も教職員もオンプレミス版の「i-FILTER」を使っていたといい、使用に違和感はなかったといいます。瀧本氏は「シェアも大きく信頼度もありました」と語ります。

尼崎市では当初デフォルトのフィルタリング設定を利用していました。利用したいURLがブロックされる場合は、各学校から利用したいURLの申請を教育委員会で受け付け、すぐに判断できるものはブロックを解除し、迷うURLは現場の教員を含めた「GIGAスクール検討会議」という合議体でブロックの可否を決定しています。しかし、この運用方法では申請から処理までに時間がかかることから、「学校管理者」アカウントを各学校に配付し、ブロックの登録・解除は、学校単位で調整できるようにしています。

また、「i-FILTER@Cloud」で利用時間を制限できる「時間割機能」についても、「学校管理者」アカウントで設定できるようにしています。先行的に実施したモデル校では、児童生徒が22時―5時はインターネットを使用できないようにするなど、学校ごとに柔軟な「時間割設定」が可能です

今後について、瀧本氏は「あくまでGIGA端末はツールですので、授業の目標を達成するための効果的な使い方を示していきたいと考えています。一方で、使用自体を目的としてプッシュしていくことも、ある程度は必要です」といいます。2021年からICTを活用した先進的な取り組みを行う学校に対して年間で各校30万円を支援する「AGSリーディング・プロジェクト校」制度を実施しており、今後もさらなるGIGA端末の活用を進めていきます。

GIGA端末は文房具、良くない書き込みは教師が把握し指導を

兵庫県立大学 竹内和雄准教授
兵庫県立大学
竹内和雄准教授

ネット問題の専門家として有名な兵庫県立大学の竹内和雄准教授。ネット問題やいじめを研究テーマとしている背景について、「子どもたちの抱える問題を見ていくと、どこにも向けられない、寂しさやしんどさを感じる子どもたちがネット依存であったり、ネットいじめをしていたりという現状があります。子どもたちの問題を追ったらネットに行き着いたのです」(竹内准教授)といいます。

2021年度はネットにおける歴史的転換期だといいます。竹内准教授は「今まで学校はネット利用を禁止・制限するスタンスでした。学校には生徒指導担当と情報担当の教師がいて、力を持っているのは生徒指導でした。これがGIGAスクール構想で逆転しました。いじめなどの問題からあまり使いたがらない教師もいますが、使う方面にシフトしています。また、子どものネット利用率も低年齢化しており、2歳児のネット利用率が過半数と、低年齢化が行き着くところまで来たという状況です」と分析します。

現代の子どもの情報リテラシーはどのように変わってきているかについては、「子どもの情報リテラシーといえば、2012年頃までは高校生が対象でした。現在は、小学生が対象の中心です。ネットを文房具として使い始める小学1年生にもネット利用のリテラシーが必要です。子どもの情報リテラシーは全体としては上がっているのですが、使わない層が使うようになっていることから、課題は山積しています」(竹内准教授)といいます。

ネットいじめについて竹内准教授は「人間が3人いれば人間関係のトラブルは発生します。同様にネットでもトラブルは起きて、いじめにつながる場合もあります。ネット上は教師が見ていないこともあり、“無法地帯”と感じている子どももいます。ですが、今後、GIGA端末を文房具として使います。子どもが良くない書き込みをした場合、設定次第では教師が把握して指導できるようになります。そこもGIGA端末の可能性の一部です。大人も学ばなければなりません。今の子どもたちのネットでの状態を保護者も学校関係者もわかりません。大人と子どもが、ネットをどうやって使っていくべきか一緒に考えていくことが必要です」と述べています。

兵庫県立大学 竹内和雄准教授

公立中学校で20年間、生徒指導主事等を担当し、寝屋川市教育委員会指導主事を経て2012年より現職です。生徒指導を専門とし、ネット問題やいじめ、不登校等の課題を持つ子どもへの対応方法について研究しています。総務省「青少年インターネットWG」構成員、総務省(近畿総合通信局)「スマートフォン時代に対応した青少年のインターネット利用に関する連絡会」座長、文部科学省「学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議」座長を務めています。

  1. 導入事例のPDFをダウンロード

ダウンロードにはお客様情報の入力が必要となります。

ご購入前のお問い合わせ

資料請求、お見積もり、ご購入・導入に関するお問い合わせは、こちらよりお願いいたします。

サポート情報

製品をご利用のお客様向け
の情報をご提供します。

導入事例
製品紹介動画

Digital Arts Security Reports デジタルアーツセキュリティレポート