フューチャースクールの取り組みにおいてWebフィルタリングは不可欠な存在

学校支援課 教育課程係長
楠堂 晶久 氏
総務省が教育現場におけるICTの活用の実証実験を行った「フューチャースクール推進事業」。中学校においては2011年からスタートし、全国8校の一校に松阪市立三雲中学校が選択され、松阪市教育委員会はそれをバックアップ。
三雲中学校では全教員+全生徒分のiPad 500台と、インタラクティブ・ホワイトボード(電子黒板)と無線LANをすべての教室に導入し、授業をはじめとする学校生活全般におけるICTの導入に取り組みました。
同教育委員会で中学校へのICT導入を支援する学校支援課 教育課程係長 楠堂晶久氏はこう語ります。
「フューチャースクール推進事業では、導入するシステムの構築からすべて教育委員会・学校側に任されており、ICT機器の導入・運用ノウハウを持たない私達にとって、ベンダーさんとの協力が不可欠です。Webフィルタリングではデジタルアーツさんに様々なアドバイスをいただきました」。
ICTを活用した授業を推進するために、タブレットに対応したWebフィルタリングを選定

フューチャースクール推進事業の取り組みにおいて、楠堂氏は三雲中学校の先生方にタブレットの活用を促すため「どんな形でもいいので、授業でタブレットを使って欲しい」と依頼しました。そのために先生方が安心してタブレットを授業に取り入れられる環境づくりが大切です。
「タブレットの操作は教員側に比べて生徒側のほうが長けていることもあります。つまり教員の知らないあいだに、生徒が授業に相応しくないWebサイトにアクセスしてしまうこともあるのです。これは教員にとっての大きな不安材料となり、タブレットの使用を躊躇させてしまう可能性もある。生徒も教員も学習に集中できる環境を作るためには、Webフィルタリングはなくてはならない存在です。Webフィルタリングによって先生方にもたらされる安心感は、タブレットの授業導入において非常に重要な事なのです」(楠堂氏)。
校内だけでなく校外を見据えて「Proxy Server」から「ブラウザー&クラウド」へ

教諭 研修主任
楠本 誠 氏
導入当初、三雲中学校ではホワイトリスト型のフィルタリング機能を持っていたブラウザーアプリを使っていましたが、授業で使用しているうちに問題が生じてきました。同校教員でフューチャースクールを推進してきた研修主任の楠本誠氏は「このブラウザーアプリでは、検索時のブロックはできていたのですが、アクセスブロックは十分でなく、生徒が直接アドレスを入力するとか、閲覧したページのリンク先をたどって行くと不適切なサイトにアクセスできてしまったのです。逆にYouTube上の有用な動画などが見られないといったことも起き、問題があることがわかってきました」。
そこで、パソコン教室用に導入していた「i-FILTER」をタブレットからも使えるようして、確実できめ細やかなフィルタリングができるように対応しました。その後、朝学習で全校生徒が一斉に使うようになるなど、利用増によるセッション不足が発生するようになり、それに対応すべく「i-FILTER ブラウザー&クラウド」にリプレース。2014年5月より使用を開始しました。
「授業でのタブレット活用が進むに連れて、フィルタリングに対しても様々なニーズが生まれてきました。例えば授業単位でフィルタリングのレベルを調整するといったことです」(楠本氏)。同校でICT支援員を務める加藤彩菜氏は「以前のブラウザーアプリでは、タブレット一台一台の設定を手作業で変える必要があったため、個別にフィルタリングレベルを変えるのは現実的ではありませんでしたが、『i-FILTER ブラウザー&クラウド』ならフィルタリングのグループ設定ができるので、『3年生用のフィルタリング設定を行う』とか『調べ学習のある時間だけ設定を変更する』といったことがWebベースのインターフェースで容易にできるようになり、授業ニーズに合わせたフィルタリングができるようになりました」。
ログによる指導が口コミを呼び違反アクセスをほぼゼロに

ICT支援員
加藤 彩菜 氏
「実は『i-FILTER ブラウザー&クラウド』導入当初は、設定がきつすぎて、Yahoo!すら見ることができない状況でした。しかし、デジタルアーツさんのご担当者に、どのように設定していけばいいか懇切丁寧にアドバイスいただいたため、今ではかなり柔軟な運用ができるようになりました」と語る楠本氏。現在では、日々どのようなサイトをフィルタリングするかなどを教員の方々が加藤氏と相談しながら調整をしています。
また「i-FILTER ブラウザー&クラウド」は、各タブレットのアクセスログを詳細に取り、簡単に閲覧できるため、生徒指導の場でも役立つといいます。「ログ画面は非常に見やすく、毎日チェックしています。ある日、とある生徒が授業に関係ないサイトを見ていたのがログに残っていたので、先生を通じて注意をしてもらったのですが、それ以降、学校全体でそういうアクセスがピタリと止みました。どうやら生徒同士の間で、『だれがどこを見ているかわかってしまう』というのが口コミで広がって抑止力として働いているようです」(加藤氏)。
フィルタリングシステムの枠を超えてアクセス情報を教育に活用する

だれがどのサイトを見たかを簡単に把握可能
楠堂氏は「ICTを授業に深く取り入れるほど、フィルタリングで制限すべきか否かのグレーの部分がたくさん出てきます。特に中学生は善悪の判断などを学んでいく時期ですから、時には『悪』も見せなくてはなりません。一概に『ブロック』では駄目なのです。
『フィルタリングシステムはあくまでツール、万能ではありません』と限界もきちんと教えていただき、フィルタリングの内容についても対話しながら作り上げていってくださる姿勢や、情報モラルのアドバイザーとして、金城学院大学国際情報学部の長谷川元洋教授とともに情報モラルの啓発に取り組むといった、システムの枠に収まらないサポートは、この事業の目的である協働教育にも通じる物があり、それが我々の信頼につながっています」。
最後に楠堂氏は「『i-FILTER ブラウザー&クラウド』のログ機能を活用すると、調べ学習の過程でどんなページを閲覧したかがわかるわけです。これをビッグデータ的に使い、生徒たちの思考のプロセスを可視化することで指導に活かすことができるのではないかと考えています」。
弊社もより安心して教育現場でICTが活用できるよう、フィルタリングの枠を超えた製品づくりを目指していきます。

校長 川口 朋史 氏
フューチャースクール推進事業
2010年度から総務省が実施した「教育現場におけるICT利活用」推進事業。
2011年度からは文部科学省の「学びのイノベーション事業」と連携して、生徒全員にタブレット、すべての教室に電子黒板、無線LAN、クラウドサービスなどのICT環境を構築し、実際の授業や部活動などにおける利活用の実証実験を行った。
全国の小学校(10校)・中学校(8校)、特別支援学校(3校)において2013年度まで行なわれ、その成果は今後ガイドラインとして公表され、教育現場へのICT利活用推進に活かされる。
三雲中学校の取り組みは本事業でも高く評価され、全国の学校から数多くの見学者を受け入れている。松阪市ではこの成果を踏まえ、2014年度に新たに市立中学校2校にもICTを全面的に導入している。