「学校情報化先進校」を目指し、全授業で積極的にiPadを活用

情報システムセンター長・ICT支援員
教育ビッグデータエバンジェリスト
横濱 友一氏
聖徳学園中学・高等学校は、2014年にICT先進教育の研究指定校「学校情報化優良校」として認定され、現在はその次の段階である「学校情報化先進校」を目指し、日々研究と実践を重ねています。
授業でのICT活用の始まりについて、同校の情報システムセンター長・ICT支援員、教育ビッグデータエバンジェリストの横濱友一先生は、このように述べます。「一昨年、試験的に共用の貸出iPadを導入し、全教職員に配布しました。その後生徒に関しても、昨年入学した現在中学2年生からiPadの活用を始め、2年目を迎えています。保護者が学校に購入代金を預け、学校がまとめて購入。モバイルデバイスを管理運用するためのシステム、MDM(Mobile Device Management)と、フィルタリングソフト「i-FILTER ブラウザー&クラウド」をインストールしたあとに配布し、生徒たちが安全に使えるように配慮しています」(横濱氏)。
目的にマッチしたカテゴリーフィルターの機能
安全な教育ICTの実現にフィルタリングは必要不可欠です。横濱氏は自ら調べ「i-FILTER ブラウザー&クラウド」を選びました。「『i-FILTER』ブランドは国産で歴史が古く、かつ認知度も高く安心感がありました。選定時にはカテゴリーフィルタリングに注目し、ブロックするか、注意を促すのか、パスワードで見られるようにするのか、3段階のフィルター設定を選べることが決め手でした」(横濱氏)。
「学校として、怪しいウェブサイトはすべてシャットアウトしてしまうという方法もあります。しかしそれでは、聖徳学園のICT理念『使える生徒を育てる』に沿ったITリテラシーが育ちにくい。警告を与え、見ていいもの、いけないもの、それを自分で判断することも勉強のうちですし、ある一部の領域では有効だと考えているんですね。たとえば、宗教や麻薬カルテルなどは授業でも取り上げますし、社会的経験上、必要な知識でもあると思います。教科書で取り上げられる内容でもありますから、それらをすべてブロックするのではなく、ポップアップで注意を促すことができるのが『i-FILTER ブラウザー&クラウド』だったので、それをうまく活用したいと考えました」(横濱氏)。
「i-FILTER ブラウザー&クラウド」の検索単語ランキングを活用、
生徒目線で授業を展開
「i-FILTER ブラウザー&クラウド」は、どのサイトを閲覧したのか、すべてのログを確認することができます。さらには、どの端末で閲覧したかまで把握できる仕組みです。フィルタリングにおいて先生が一番使用している機能は、日ごとに表示される検索単語ランキングだと言います。
「生徒には『これは検索してはいけない』という制限を与えず、『自由に使いなさい』と言っていますので、本当に自由に使います。ですので、生徒がいま何に興味を持っているのかが、はっきりと表れるんですね。考え方や頭の中がデータとして表れるので、関心のあるキーワードに授業で触れると、生徒の食いつき具合がまったく違います。授業とこれらのデータを突き合わせることで、より伝わりやすい授業展開が可能になります」(横濱氏)。
フィルタリングといえば、「安心・安全」のためのツールだが、このようにユニークな活用法もあるのです。
さらに、校内用SNSの単語データと融合させることにより、いま何を見て、どんなものが好きで何が嫌い、ということが明確になってくると言います。「たとえば、友達を見つけられない生徒がいたとすると、その子の好きなものから同じ趣味の生徒との接点を持たせてあげることも可能になるかもしれません。それによって、学校生活が楽しくなるだろうと予想します。今後は、そのようなことにも活用していきたいと考えています」(横濱氏)。
学校は間違えてもよい環境、生徒が失敗しながら学ぶリテラシー教育
iPad導入後の生徒の学力については、どのような変化があったのでしょうか。横濱氏は次のように述べます。「今までiPadを使用していなかった学年の生徒と、導入した年度に中学1年生だった生徒の英語の成績を比較した結果、後者では下位層の成績が向上している結果が出ました。勉強の仕方がわからない、つまらないという生徒もいます。それを何とかするのもICTならではの力だと考えています。iPadを取り入れてから、楽しそうに勉強している姿が多く見られるようになりました」(横濱氏)。
タブレットによる学習効果は、確実にあることが実証され、授業における積極的な活用はますます広がっています。少子化の時代、入学希望者が減る学校もあるなか、ICTの活用やグローバル化対応、アクティブ・ラーニングの導入によって注目を集め、躍進している聖徳学園中学・高等学校。「来年は何か新しいこと、やらないんですか?」と、次の取組みに期待している保護者も少なくないと言います。
「私たちは、iPadを『文房具』と位置づけ、生徒は毎日学校へ持参します。充電をし忘れて登校する子、iPad 自体を忘れる子、パスワードがわからなくなった、朝OSのアップデートをしてしまい1時間目に使えない、など、毎日トラブルが起こります。しかし、ICTリテラシーは体験しないと身につきません。生徒には、何かに頼りすぎてはいけないという話もしますし、『iPadに使われないようにしよう』と教育しています。間違えることも大切ですし、学校は間違えてもよい環境です。生徒には今のうちにたくさん失敗を経験してもらい、それを私たちがサポートし、心を育てていきたいですね」(横濱氏)。
聖徳学園中学・高等学校

聖徳学園中学・高等学校は、東京都武蔵野市にある中高一貫校。学校法人聖徳学園が運営。世界を舞台に活躍するための力を、ICT教育・グローバル教育・アクティブラーニングなどを取り入れた21世紀型教育により実践、新時代に羽ばたく生徒の育成に取り組む。JAET(日本教育工学協会)から学校情報化優良校として認定され、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の「アクティブ・ラーニングを実践するタブレット端末活用授業の開発研究」 協力学校として、教育ICTを牽引する。